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『ブルーに生まれついて』と『聖の青春』について

Grasshoppa!
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Chet Bakerの伝記ドラマ映画『ブルーに生まれついて』を久しぶりのル・シネマで観てきました。この作品去年のTIFFで上映されていたのは、知っていたのだけれど、気付いた時にはSold Outだったのです。
Chetは、伝説的なJAZZトランペッターで50年代のウエストコーストジャズの立役者。甘い中性的なヴォーカルでも知られ、その歌唱法はかのジョアン・ジルベルトにボサノバのヒントを与えたともいわれている。
僕は元々Elvis Costello『shipbuilding』(1983)でのチビリペットがChetの演奏と知り、興味を持った。当時はたしか一番有名な『Chet Baker Sings』(1954)も廃番だったのかな?しかしほどなくして再発されたアナログ盤を買った記憶がある。80年代後半Chetの再評価ブームが、アニエスb.とかA STORE ROBOTとかのファッション系から来て、1986年の初来日につながったように思う。(仕掛け人はたしか立川直樹さんだったと思う)パルコ劇場で前から2列目で当時の彼女と観た。Chetはもう枯れ木のようにスポットライトの中でスツールに腰かけ目を閉じ、精気が全くなかった。JAZZなんか興味のない彼女は隣でウトウトしてた。でも、Chetが歌い出すと全く空気が変わった。もうあんなジャンキー老人のどこから、あんなSweetで無垢な歌声が出てくるのか。声だけが全盛期のままのようで、衝撃を覚えた。それから2年ほどして、朝刊の事務的な死亡記事で彼の死を知る。アムスで窓から転落死って…その記事は切り取って保存してある。それから大好きな写真家Bruce Weberが彼をムービーでドキュメントしていたことを知り、『Let’s Get Lost 』(1989)が日本でも劇場公開され、観た。BWらしい美意識に貫かれたフィルムだった。まあ、だから結構Chetには思い入れがあり、ファン目線で観たのだけれど、良かったですよ。Chetをイーサンホークが演じているのだけれど、やっぱり顔は系統が違うくて、(ディカプとかが近いと思う)それでも映画が進行するにつれ、Chetに見えてくる。ドラマは麻薬中毒で売人に前歯を全部へし折られ(ペット吹きには命)、どん底に落ちる。が二番目の奥さんに支えられ、必死で再起する、でもやっぱりマイルズが見に来ているNY『BIRDLAND』楽屋でプレッシャーに耐えれず、打ってしまう….同時に客席で見守っていた奥さんも去ってゆく。歌声もイーサンがかなりがんばっているけど、やっぱり違う。けど『I’ve Never Been In Love Before』では泣きました。実在の人物のある期間を限定して描くということ、JAZZという一見さんにはとっつきにくい奥深い音楽を扱っている、麻薬中毒という病を抱えて戦っている、二番目の奥さんとのラブストーリーを主軸にしている等、かなり『聖の青春』とも苦労していることが共通してあると思いました。僕は、難しいけど実在の人物を映画というフィクションという構造の
中で描くのは、とても可能性がある方法論だとこの映画を見て改めて再認識した次第です。
一ファンとしては、Chetのどうしょもなさ、そっち行っちゃダメでしょ、って方向に行ってしまう男の性(サガ)に共感してしまいました。『Raging Bull』のデニーロ演じる、ジェイク・ラモッタしかり….。聖….。(K)

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