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BookSoup2018『観光』(短編集です)

Grasshoppa!
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久しぶりに本を紹介します。著者ラッタウット・ラープチャルーンサップは、1979年にシカゴ生まれ、バンコク育ちのタイ系アメリカ人の小説家です。『ブンミおじさんの森』で著名な映画監督、アピチャッポン・ウィーラセタクンと同じく、もうこの長い名前だけで挫折する方も多かろうと思われるのだが、この『観光』はメチャクチャ面白い珠玉の短編集です。
たぶん邦訳が出版されたのは10年以上前かと思われるのですが、『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』(花田菜々子著)の中にこの本が登場していたので気になり読んでみたのです。(『出会い系~』はタイトルの軽い印象とは違いとても熱い本です。これも是非)
7篇収録されているのだが、タイの美しいビーチや騒々しい猥雑な街角で、すべて何かを失った、もしくはこれからさらに失うだろう、人々の喪失の予感が少年少女の目線でみずみずしく描かれています。どれもこれも読後、カーヴァーやカポーティの短編のように、唸ってしまう、うまさがあります。
ちなみに表題作の『観光』は、やがて失明し光を失いつつある母親と息子の美しい海辺のリゾート地への旅の道程を描いています。
原題は『Sightseeing』。タイトルの鮮やかさも見事かと思います。本当にかみしめながら読む喜びを久しぶりに感じました。文庫で出ているので是非。(K)

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