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グザヴィエ・ドラン②『わたしはロランス』

Grasshoppa!
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先日『マイ・マザー』『胸騒ぎの恋人』を観て、今日『わたしはロランス』を観ました。すさまじい傑作でした。ストーリーはといえば、小説家としても評価されている国語教師ロランス(♂)は、恋人であるフレッド(♀)に30歳の誕生日に「自分が男性であることに違和感を感じる。これから女性として生きてゆく」と告白する。フレッドは、ロランスを深く愛しているがゆえに、混乱しながらも、彼を理解し、受け入れようととする。しかしながら、無遠慮な周りの視線や社会からの拒絶、家族の無理解から、精神に破綻をきたし、あるパーティーで知り合った男と結婚し、町を去る。時は過ぎ、子供を得て、平凡ながらも満たされた家庭にいるフレッド。ある時、自宅にロランスの詩集が送られてくる。その一編に自分の家のブロックの一片をピンク色に塗り込めたロランスのメッセージを発見し、彼が同じ街に住み、自分を見守っていたことを知る。フレッドは手紙をロレンスに書き、二人は再会し、再び愛の炎が燃え上がる。いや、二人は片時も互いのことを忘れたことはなかったのだ。
二人の憧れの地イル・オ・ノワールへ家庭や恋人を捨て、逃避行する二人。しかし、愛するが故に相手をののしり、傷つけてしまい、ロランスはフレッドを置いて去ってしまう。
数年後の秋、モントリオールに戻った二人はバーで再会する。そして、枯れ葉舞い散る街に二人は別々に出てゆく。ロランスとフレッドの“10年愛”を描いたこの作品、我々が“愛している”と言っている感情が、男と女という前提や社会的な価値観に守られているいかに脆弱なものであることに気付かされます。描かれている感情の生々しさは、カサヴェテスの映画を初めて観た時と同じくらいの衝撃でした。フレッドがレストランで女装したロランスに悪気なくしかし無神経にからむ老ウエイトレスに対して激昂するシーンは、フレッドの深い愛を感じさせるがゆえに切なくやりきれない。『マイレフトフット』のダニエル・デイ=ルイスが、恋する女医に対して抗議するため、酒場のテーブルに頭を打ち付けるシーンに匹敵するエモーション量!あと、ロレンスの母親をナタリー・バイが演じているのだが、もう素敵すぎて言葉がない。トリフォー『アメリカの夜』、ゴダール『勝手に逃げろ/人生』以来スクリーンで観たが(あ、『ゴダールの探偵』も)、なんであんなに美しく齢をとれるのか。声も素敵。4/25公開の『Mommy』前に、残す『トム・アット・ザ・ファーム』も観なくては!というカンジになってきました。皆様も是非、渋谷アップリンクにてドラン特集上映4/24まで!(K)PS.画像はドイツ版ポスター。そしてこのシーンでかかる曲が、The Blue Nile『Let’s Go Out Tonight』。Remixらしいが。感涙。

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