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『穏やかなゴースト 画家・中園孔二を追って』

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2015年に25歳の若さで夭逝した、画家・中園孔二の評伝です。坂出市の海岸岩場に『カラマーゾフの兄弟』上巻とTシャツと靴を残して溺死してしまった、死後ますます評価が高まる天才画家。十数ページ読んで少し泣き、また十数ページ読んで声を上げて笑ってしまうそんな読書体験でした。この青春感には『聖の青春』にも匹敵するほど震えた。中園孔二は、夜中に山を歩き回って夜露を啜り、都市の闇に滑り込んで廃屋のビル屋上で眠り、雨の中を上半身裸で叫びながら歩く…。純粋ゆえの突拍子もない行動(まるで子供)や自身の孤独を世界中の孤独と一個一個つなげてしまうような圧倒的な作品の世界観は、アノ人に被ってしょうがなかった。と、思って読んでいたら、彼がフランスを野宿で旅していた時のノートに『・・・(中略)会場チケット3度目はだめらしかったが一度ことわられた後、係のお兄さんが呼びとめてくれて特別に入れてくれた。ライアントレカーティンをひと回り見る。(2本)コインランドリーでアラブ系のおばさんがやり方教えてくれる リンゴ2個あげる。そのままパリに戻る。中華料理屋でごはんして橋の下でね(寝)る。フィシュマンズを聴く。』と書かれていたのを見て声を上げてしまった。彼の少年時代から藝大時代まで過ごした実家のある横須賀から横浜市金沢区周辺、鎌倉でのバイト先「よしろう」「和さび」、好きだったらしい長谷の「ぶい」など自分にも馴染のある風景が出てきて、中園が自分と一緒に青春を過ごした仲間のように錯覚してしまった。淡島通りを自転車で通り過ぎる時、「ワイキキ・ビーチ~ハワイ・スタジオ」のかってあった気配を感じるように、中園が生きていた場所へ聖地巡礼してみたくなった。できれば高松まで。彼は迷惑だろうけど。(K)

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